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デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードが浸透し、大企業にとどまらず中小企業でも何をすべきかの検討が進み始めています。
本シリーズでは、浅間商事が考える中小企業のデジタル化についてご紹介いたします。
部門別に、具体例を挙げながら共有しております。第1回は「営業部」編として、営業活動のデジタル化ポイント7つをご紹介しました。
日々の業務の効率化を実現するデジタル化。本シリーズでは、浅間商事が考える中小企業のデジタル化についてご紹介いたします。第1回は「営業部」編。営業活動における、デジタル化ポイントを7つご紹介いたします。 | パソコン・複合機・ネットワークの総合IT商社は浅間商事
第2回は「総務・人事・経理」編です。
総務・人事・経理をはじめとした間接部門は、会社全体を支える部門です。営業などフロント部門も、間接部門とのかかわりなく業務を進めることはできないため、その効率化は会社全体の成長スピードにつながります。
デロイト トーマツ グループのアンケート調査によると、企業の直間比率は2012年の調査開始時から約1.19倍となっており、間接部門の生産性向上が課題に挙げられています※1。
間接部門、バックオフィスと呼ばれる部署は企業により異なります。今回はその中でも代表的な「総務・人事・経理」部門を取り上げ、そのデジタル化をご紹介いたします。
「総務・人事・経理」のデジタル化ポイント5つ
総務・人事・経理部門には、どのような業務があるでしょうか。
総務
- オフィス・施設・車両等の管理および整備
- 社内規程の策定・改定
- 文書管理
- 備品管理
- 社内行事の企画・運営
- 福利厚生
- 社員の安否確認・危機管理 など
人事
- 採用活動
- 教育・研修
- 人事評価
- 労務管理 など
経理
- 給与・経費の計算・精算
- 請求書の発行
- 売掛金・買掛金の処理
- 決算書の作成 など
上記を参考に、デジタル化ポイントをご紹介してまいります。
現在東京都庁が進めているデジタル化のフレームワーク(枠組み)※2が、私たち浅間商事や、中小企業のお客さまにも使いやすいと感じましたので、こちらを使って解説いたします。
- ペーパーレス(紙の削減)
- FAXレス(FAX機利用の廃止)
- はんこレス(押印の廃止)
- キャッシュレス(現金の廃止)
- タッチレス(非接触、非対面)
デジタル化ポイント1:ペーパーレス(紙の削減)
- 社内文書の電子化
- NAS/クラウドサーバーで文書管理(保存・共有・検索・バックアップ)
総務・人事・経理で共通するのが、管理する文書が多いことです。総務であれば管理・保存すべき会社のあらゆる文書、人事であれば労務関連・採用関連、経理であれば請求書や領収書など、日常的に文書管理が必要になる業務です。
社内文書の電子化
デジタル化の第一歩として、社内文書を電子化しましょう。社外文書は自社の都合のみで電子化はできませんが、社内文書なら可能です。なじみやすいWordでもExcelでも、メールでもチャットでも大丈夫ですので、はじめから電子化して、印刷をしない運用を始めましょう。
慣れるまでは逆に非効率になることもありますが、慣れてしまうと作成・集計・保存・検索スピードが上がります。外勤社員や在宅勤務社員の生産性も上がります。
なお、「社外」文書の電子化にも挑戦する企業がありますが、中小企業での成功例は多くありません。大量・多用・非定形の書類のスキャンや名前付け、保存にかかる手間の方が、保管コスト削減効果と比べて大きいためです。
とは言え、検索性アップなどのため、挑戦される場合には過去の書類は置いておいて、これから発生する書類のみ電子保存していくことをおすすめいたします。
領収書・納品書・請求書の電子化も進んでいます。e-電子法により、諸条件はありますが、領収書、請求書、納品書などは電子化して保存することが認められています。はじめから電子化されて受け取れれば保存・管理も楽になります。
NAS/クラウドサーバーで文書管理(保存・共有・検索・バックアップ)
データファイルの管理には、保存・共有・検索・バックアップのしやすいNASやサーバーがおすすめです。
NASの選定ポイント
- データ容量:サイズが大きいデータが増えているため、十分な容量、容量追加の可否を確認しましょう
- データ共有:社内・社外とのデータ共有の可否を確認しましょう
- データ検索:新しい機器は検索スピードが速くなっています
- バックアップ:必ず設定しましょう。履歴管理バックアップは前のバージョンに復元できる便利な機能です
また、最近では、会社の中にサーバーやNASを置くのではなく、クラウドのサーバーを使う企業も増えています。クラウドサーバーには、次のようなメリットがあります。
クラウドサーバーのメリット
- 社外からのアクセスが容易
- ファイルの共同管理だけでなく共同編集も可能
- 盗難・故障・災害のリスクが低い(BCP対策)
- いつでも好きな時に使いたいだけ容量を追加できる
提案商品・サービス例
- 電子文書作成:Microsoft Office Word、Excelなど
- スキャンによる電子化:スキャナーや複合機など※
- クラウドサーバー:SharePoint Online(シェアポイント オンライン)など
※OCR(文字認識)機能を使うと、原稿内の文字列からファイル名を自動で付けることもできます
デジタル化ポイント2:FAXレス(FAX機利用の廃止)
- ビジネス複合機でFAX送受信の電子化
総務・人事・経理でも、FAX送受信の業務が残っていませんでしょうか。FAXもデジタル化が可能です。
受信FAX
複合機などの転送機能を利用して、メールやファイルサーバーなどにPDFデータとして転送することができます。転送することにより、紙の出力が0枚になるだけでなく、外出先でスマホやパソコンからFAXを見ることができるようになります。
送信FAX
多くの複合機では、パソコンからFAXを送信することができますので、紙を印刷して複合機まで行って送信する必要はありません。
提案商品・サービス例
- FAXの電子化:ビジネス複合機
- 電子FAXの閲覧、編集:ソフトを使うことでよりFAXの電子化が進みやすくなります
- imageWARE Desktop(イメージウェアデスクトップ)
- Adobe Acrobat DC(アドビアクロバットDC)
デジタル化ポイント3:はんこレス(押印の廃止)
- 社内文書:ビジネスチャットやクラウドサービスではんこレス承認
- 社外文書:電子契約クラウドではんこレス契約
間接部門も、各種承認や契約などに押印が必要になる部署です。特に会社の実印や認印は、間接部門で管理・対応しているケースが多くあります。
社内文書の承認
ビジネスチャットでの簡易承認:TeamsやSlack、LINE WORKSのようなビジネスチャットを使えば、資料の添付とそれに対する承認のコメントが迅速にできます。しかも設定次第で社内共有が同時にできますし、後から検索することも容易になります。高価な承認システムを別途使わずとも、社内の簡易的な承認はこれですませることができます。
クラウドサービスでの承認ワークフロー:より確実正確に、承認を実行・記録したい場合には、「ワークフロー」機能の付いたクラウドサービスがおすすめです。
社外文書(契約など)
会社の実印や認印で取り交わしていた契約書類も、デジタル化が進んでいます。
実物の社判ですと、出社したり、代理で押してもらったりする手間やリスクがありますので、電子契約のほうが安全な面もあります。銀行や裁判所でも認められるレベルのサービスも出てきています。 電子契約は印紙代が不要になるメリットもあります。
提案商品・サービス例
- ビジネスチャットでの簡易承認:Teams(チームズ)、Slack(スラック)、LINE WORKS(ラインワークス)など
- クラウドサービスでの承認ワークフロー:NI Collabo 360(NIコラボサンロクゼロ)など
- 電子契約:CloudSign(クラウドサイン)など
デジタル化ポイント4:キャッシュレス(現金の廃止)
- 口座振り込みで経費精算(ネットバンキング)
- ICカードで交通費精算、法人向けプリペイドカードで経費精算
総務・経理部門では、交通費や経費、賞金など小口の現金を扱うケースが少なくありません。手間や盗難紛失リスクなどを減らすためにも、デジタル化(キャッシュレス化)したいポイントの一つです。
給与や賞与、定期代は口座振り込みの企業が多いと思いますが、交通費、賞金などはまだ現金手渡しの企業も少なくありません。
まず、現金をやめて口座振り込みにしましょう。加えて、(すでに導入済みの企業も多いと思いますが)法人用ネットバンキングを利用することで、銀行窓口への移動を不要にしましょう。
また、交通費や小口の経費については、交通系ICカードや法人向けプリペイドカードの導入も考えられます。プリペイド方式であれば、会社から従業員に現金を渡す必要がなくなるだけでなく、明細もデータで残すことができます。
なお、駐車場についてはまだ現金払いのみの場所が多く、浅間商事でも現状の課題の一つとして残っています。
提案商品・サービス例
- 法人向けネットバンキング
- ICカード、法人用プリペイドカード
デジタル化ポイント5:タッチレス(非接触、非対面)
- WEB会議で採用面接実施
- クラウドツールで問合せ対応
- RPAによる各種作業の自動化
人事での面接、間接部門で対応する各種問合せ、その他定型作業についてタッチレスを実現するデジタル化ポイントをご紹介します。
WEB会議で採用面接実施
採用面接において、WEB会議(ビデオ会議)を利用した面接は一般的になってきました。
- 移動のコストと手間が省ける
- 参加場所が柔軟になるため、スケジュール調整が容易
この2つのメリットを背景に、オンライン面接の提案で企業の採用プロセスは格段にスピードアップしたと言われています。採用活動の迅速化は人事業務の効率化につながるだけでなく、入社希望者側のメリットでもあります。
なお、実際に顔を合わせるため、入社希望者が通勤経路やオフィスの雰囲気を確認するためにも、二次面接以降は来社いただくこともおすすめです。
クラウドツールで問合せ対応
代表電話はスマートフォン+クラウドPBXで
代表電話は総務、もしくは間接部門で対応しているケースがよくあります。
テレワークが普及した現在、電話対応のために出社が必要、デスクから離れられないといった状況は、効率的ではありません。電話の主装置をクラウド化したクラウドPBXを導入すれば、固定電話の番号をパソコンやスマートフォンで受発信することができます。電話機に縛られることなく、電話対応ができるようになります。
よくある質問と回答はイントラネット・ビジネスチャットで共有
社内の問い合わせとその管理も、特に間接部門で多くなる業務です。経費精算、人事関連の申請など、その方法や必要書類の問い合わせを受けることも多々あります。
ビジネスチャットであれば、社内の質疑応答をオープンかつ迅速に対応・共有ができます。電話(口頭)ではなくデータなので、後から検索もできるようになります。
そして、固定の社内手続きの案内やドキュメントの共有にはイントラネットの活用がおすすめです。TeamsやSharePoint Onlineであれば、Excelより見やすく、そして管理しやすい形でリストにし、社内で共有することができます。
RPAによる各種作業の自動化
総務・人事・経理では、定期的・定型のデータの入力、集計や加工などのルーチン作業も少なくありません。経理であればデータの出力や転記、人事であれば勤怠や給与計算、評価などに手動作業はないでしょうか。
もし、毎回一定のルールにそった作業なのであれば、RPAで自動化が可能です。 RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上の作業を自動化する技術であり、別名「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」とも呼ばれています。
業務の効率化や、人によるミスの低減が図れ、結果としてコストの削減や作業の質の向上が見込めます。関係する担当者が減れば、その分タッチレスな環境も築きやすくなります。
最近はローコード/ノーコードのツールも登場し、エンジニアでない方にもプログラムが組めるようになってきています。大企業を中心に提案が進んできましたが、中小企業の皆さまにもぜひご活用いただきたい技術です。
提案商品・サービス例
- WEB会議ツール:Teams(チームズ)、Zoom(ズーム)など
- クラウドPBX(電話の主装置をクラウド化):INNOVERA(イノベラ)
- イントラネット(社内ポータルサイト):SharePoint Online
- ビジネスチャット:Teams(チームズ)、Slack(スラック)、LINE WORKS(ラインワークス)など
浅間商事の事例
浅間商事の間接部門のデジタル化事例をご紹介いたします。
ペーパーレスの推進
総務・人事・経理部門に限らず、テレワークの浸透とともに会社全体でペーパーレスの意識が高まりました。
最近では「なぜわざわざ紙を印刷していたのだろう?」「この人はなぜ紙をくれるのだろう?(後で電子化するのが手間だ)」というような意識に変わりつつあります。
ペーパーレスが進んだことで、デスクやキャビネットがスマートになるだけでなく、紛失や破損、盗難のリスクも減ります。
浅間商事の上野の東京本店フロアは、今年3月に個人デスクを廃止し、個人の文書管理スペースは縮小されました。実際にどれくらいペーパーレスなのか、オフィスツアー※3で見学いただくこともできます。
浅間商事では、長年使用してきたファイルサーバーを廃止し、社内データはSharePointへの移行を進めています。総務・人事・経理チームのデータも移行中で、SharePointならではのアクセス管理、ファイルの共同編集、検索などが業務の効率化に役立っています。
浅間商事では、社内コミュニケーションツールをメールからビジネスチャットのTeamsに移行し、すでに定着しています。
そのため、総務・人事・経理をはじめとした間接部門への質問は専用のチャネル(チャット場所)を作成しました。現在はそのチャネルでオープンな質疑応答が行われています※。
今後は、よくある固定の質問をSharePoint上のページにまとめることで一覧性を高め、さらに検索もできることで共有しやすくする予定です。
※オープンにしたくない個人的な質問は、担当者に直接チャットで質問が可能
社内承認の一部の押印廃止
今まで印刷・押印していた申請書のExcelを、印刷せずにデータのままTeams(チャット)上で上司に確認依頼をし、上司から経理に提出するというフローに変更しました。データはSharePoint(クラウドサーバー)上に保存されているため、部下→上司→経理の確認も簡単になりました。
採用で一次面接はWEB会議
浅間商事でも、採用面接において一次面接は原則WEB会議で実施しております。できるだけ多くの方とお話しするためにも、効率的なオンラインでの面接は欠かせないものになってきました。
また、採用希望者側にもオンライン面接のニーズは高く、オンラインに対応していることによる先進性・柔軟性など、企業イメージ向上にも役立っています。
【注意】私たちが感じている間接部門デジタル化の注意点
デジタル化推進の一方で、気を付けないといけない点も見えてきました。
各業務で細分化されたクラウドサービスが各社から発売されているため、連携されていないクラウドサービスを入れすぎると、逆に管理効率が下がるという点です。特に間接部門を対象にしたサービスの種類が増えているため、注意が必要です。
例えば、5つの連携されていないクラウドサービスを利用していると、新入社員が一人入る度に5つのサービスに社員情報を登録しなければならなくなります。
まずは、Microsoft 365やGoogle Workplace、NI Collabo 360など、総合的なクラウドサービスをできる限り活用して、それで足りない部分を他のクラウドサービスで補うのが管理面やコスト面ではよさそうです。今後各社のクラウドサービスも統合・連携していくと思いますので、今は過渡期にあると考えています。
まとめ:「間接部門の効率化」は「会社全体の成長スピード」へ
日々の業務の効率化を実現するデジタル化。本シリーズでは、浅間商事が考える中小企業のデジタル化についてご紹介いたします。
第2回は「総務・人事・経理」編。間接部門のデジタル化ポイントを5つご紹介しました。
1. ペーパーレス(紙の削減)
2. FAXレス(FAX機利用の廃止)
3. はんこレス(押印の廃止)
4. キャッシュレス(現金の廃止)
5. タッチレス(非接触、非対面)
総務・人事・経理をはじめとした間接部門は、会社全体を支える部門です。営業などフロント部門も、間接部門とのかかわりなく業務を進めることはできないため、その効率化は会社全体の成長スピードにつながります。
第3回は、中小企業の社長様向けに「経営・マネジメント編」をお届けいたします。経営視点でのデジタル化について、自社事例も含めご紹介いたします。
※1: 要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査(調査:2019年)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20200409.html
※2: 都政のDX推進に向けた「5つのレス」の徹底:2020年度の目標を達成しました!
https://note.com/kouzoukaikaku/n/nc276bc6e4df9
※3:働き方改革モデルになるすごいオフィスの見学ツアーが東京で開催!
https://www.asama-shoji.co.jp/blog/topics/1565/
(オフィスツアーは、当社とお取引のある企業さま、今後お取引を希望される企業さま、入社を希望される方のみを対象としております。大変恐れ入りますが、該当しないお申込みに関しては、お断りさせていただく場合がございます。)