今回も株式会社船井総合研究所 IT・セキュリティグループ シニア経営コンサルタントの斉藤芳宜氏にこれからの働き方改革についてお話いただきます。第5回目はビットコインで注目されるブロックチェーンが世の中に与える影響、働き方への影響についてのお話です。
「ビットコイン」
みなさん、「ビットコイン」はご存知でしょうか?最近は新聞でもよく話題になり、価格が年初から10倍になっているということで注目されています。
そもそもビットコインとは何かというと、インターネット上でやり取りされる「仮想通貨」です。そして、今回テーマに挙げている「ブロックチェーン」とは、ビットコインを動かすシステムのことを指しています。
ビットコインが面白いのは、発行主体、管理主体がいないということです。リアルの通貨であれば、日本政府や日本銀行が発行主体であり、管理主体であります。また、SUICAや楽天ポイントのような電子マネーも発行・管理主体が存在します。
しかし、ビットコインは管理者が不在で、利用する参加者同士が相互管理するというなんとも不思議な仕組みになっています。
また、日本の紙幣であれば日本銀行の信用によって価値が認められていますが、ビットコインには何の後ろ盾もありません。あるのは2009年の運用スタート以来、8年以上一度も停止することなく運用され続けているという「システムの信用」です。
そして、この「管理者不在で動く」、「第三者を介する必要がない」という特徴こそブロックチェーンが破壊的な影響力を持つ秘密です。
ブロックチェーン技術を活用することで、銀行や証券取引所が膨大なコストをかけて構築してきたようなシステムを、低コストでより安全な仕組みで構築することができるようになる可能性が高いのです。そのため金融関係者がブロックチェーンに注目しています。これまで何千億円と投資をしてきたシステムが置き換わってしまうかもしれないのです。
これは自社のシステム投資を抑えられる良い側面と、新たな参入者に取って代わられる危険性の側面があります。だから、金融関係者はブロックチェーンから目が離せないのです。
ブロックチェーンによる変革
では、このブロックチェーンによって何が起こるのでしょうか?
1つは、中抜きです。
しかも、強烈な中抜きです。
インターネットが出てきた時にも中抜きが起こると言われました。実際に、インターネットにより直接取引が進み、卸売業の存在価値が薄れ、なくなっていった会社も多いです。
では、ブロックチェーンでは何が中抜きされるのでしょうか?
それは、現在手数料ビジネスを展開している仲介業者です。先ほど申し上げたように、ブロックチェーンでは第三者を介す必要がありません。PtoP(ピアツーピア)でエンドユーザーが直接やり取りすることができます。そのため、手数料が圧倒的に安くなります。
ここでも金融機関がでてきますが、これまで送金手数料や決済手数料で儲けていたビジネスは大打撃を受けます。利用者にとっては良い話ですが、仲介業者にとっては死活問題です。ただ、利用者にとって利便性が高まる方向に進むでしょうから、金融機関は戦々恐々です。
金融機関の話がよく出てきますが、何も金融機関だけに限った話ではありません。現在プラットフォームを握り、手数料ビジネスで儲けている仲介業者は危ないです。自ら変革しないと手数料が激減し、最悪の場合取って代わられてしまうかもしれません。業界が大きく変わっていきますね。
「スマートコントラクト」で効率化
ブロックチェーンによって何が起こるのか、2つめは、自動化・効率化が進むということです。
ブロックチェーンには、「スマートコントラクト」という考えがあります。スマートは賢い、コントラクトは契約という意味で、直訳すると賢い契約。ある条件に基づき、自動的に契約の執行を進めるようなものです。
例えば土地の登記において、紙の契約書に手書きで署名し、あるいはデータの契約書を印刷し、押印し、再度スキャンし、それをメールで転送する…。
非常に効率が悪いですね。この業務プロセスをスマートコントラクトを活用することで、余計な業務を省き、自動化することで、登記プロセスを簡素化することができます。業務プロセスを流れ作業図のように記述し、ある条件になると次の作業に進む、という具合にプログラミングし、業務の自動化を進めていきます。
しかも、ブロックチェーンの技術を使うので、データが改ざんされにくい安全な仕組みとなります。まだ実証実験段階ではありますが、現在非効率で多くの人が困っているような業務(国の行政サービスなど)は、一気に自動化・効率化が進むかもしれません。まさに、働き方が大きく変わる可能性があります。
IT活用の二極化時代へ
ブロックチェーンは目に見えないので、社会に浸透していく実感はあまりないかもしれませんが、より低コスト・より安全にITが使えるようになっていくでしょう。そうなると、ITのハードルが下がり、IT利用者がこれまで以上に増えることでしょう。
これ自体はいいことなのですが、気になるのはITを活用できる人とできない人との格差が広がるのではないかということです。
つまり、IT活用の二極化です。ITを使いこなせる人はより生活が便利になり、仕事も効率よくこなせるようになりますが、そうでない人はその真逆になってしまいます。
日本のITリテラシー(ITを使いこなす力)を高める動きをしていかないと、世界に置いて行かれてしまうのではないかと感じています。
ITリテラシーを高めたいと思っている方は、浅間商事さんに相談してみてください。必ず良い提案をしてくれるはずです。
株式会社船井総合研究所
IT・セキュリティグループ
グループマネージャー/シニア経営コンサルタント 斉藤芳宜氏
IT企業コンサルティングチームにおいて、即時業績アップにつながるコンサルティングを得意とする、IT ・ソフト開発会社専門コンサルタント。「答えは現場にしかない」という信念のもと、年間250日以上を現場での調査と業績アップ支援に充てている。(出典:船井総合研究所 )