今回も株式会社船井総合研究所 IT・セキュリティグループ シニア経営コンサルタントの斉藤芳宜氏にこれからの働き方改革についてお話いただきます。今回は、フィンランド視察で訪問したユニークなIT企業の事例です。
今回ご紹介するのは、フィンランドに本拠を置きソフトウェアの開発を行っているFuturice(フューチュリス)です。実は船井総研でもずっと注目していた会社です。
なぜなら、世界50カ国以上で従業員意識調査を行っているGPTW(Great Place to Work)が発表する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、ヨーロッパNo.1になっているからです。また、業績も好調で8年連続増収、毎年25~30%の成長を遂げています。
順風満帆にみえるFuturiceですが、従業員が50名を超えた頃に失敗を経験しています。
多くのIT系スタートアップと同じように、自由に仕事をしてきたFuturice。従業員が50名を超え始めた頃に、「このままではマネジメントができないから、普通の会社のように上司が部下を管理する会社を目指さないといけないのでは…」と感じ、管理する会社を目指しました。
その結果、社員のモチベーションが下がり、仕事の効率が下がり、Unhappyな会社になってしまったそうです。これではまずいということで、方針を大きく変えたそうです。
管理は自分たちに合っていない。自分たちに合ったモデルを作ろう、ということで、「Leadershipmodel to empower people」(社員に権限を与えるリーダーシップモデル)というコンセプトで、管理するのではなく、「自由と責任」の権限を与えました。
そうすると、社員のモチベーションが上がり、会社が成長軌道に乗り、Happyな会社になりました。
Futuriceは、社員を信頼し、大きな権限を与えることを非常に重視しています。
そんなに権限を与えてしまって、悪いことする社員が出てきたらどうするのか?普通はそう思うと思いますが、それは採用の段階でかなり見極めを行っており、そのリスクを入口で塞いでいます。
信頼はつかみ取るものではなく、入社した日から与えられるもの――――――――――
また、Futuriceの話の中で印象的なのは、「TRUST IS GIVEN NOT EARNED.」という言葉です。信頼はつかみ取るものではなく、入社した日から与えられるもの。という意味です。
会社が社員を信頼することにより、社員が会社を信頼するようになります。いわゆる鏡の法則ですね。社員を信頼し自由と責任を持たせると、自主性が高まります。そうすると高い生産性を生み出すようになります。
また、社員が自主性を持つためには「透明性」、つまり情報公開することが重要ということも言っています。なぜなら、多くの情報があると意思決定の質が上がるからです。少ない情報の中では良い意思決定ができません。
Futuriceでは信頼と透明性を高める様々な仕組みが用意されています。例えば、社員全員に会社のクレジットカードが渡され、自由に使うことができます。これ自体、会社が社員を信用している証拠と言えるでしょう。普通の会社ならここまではできないでしょう。
また、すべての会議がオープンになっていて、ライブチャットで参加することができます。どんなに重要な会議にでもです。これもなかなかできないです。非常に透明性が高いと言えるでしょう。
この事例から学べることは、
生産性を上げるためには、ガチガチに管理するのではなく、社員に権限を与え、自主性を高め、自分で考えて行動してもらう。そのために、情報をオープンにし、現場で意思決定してもらう。
そのような働き方を目指していきたいですね。
株式会社船井総合研究所
IT・セキュリティグループ
グループマネージャー/シニア経営コンサルタント 斉藤芳宜氏
IT企業コンサルティングチームにおいて、即時業績アップにつながるコンサルティングを得意とする、IT ・ソフト開発会社専門コンサルタント。「答えは現場にしかない」という信念のもと、年間250日以上を現場での調査と業績アップ支援に充てている。(出典:船井総合研究所 )