前回からシリーズとして株式会社船井総合研究所 IT・セキュリティグループ シニア経営コンサルタントの斉藤芳宜氏にこれからの働き方改革についてお話いただいております。今回は、フィンランド視察で訪問した先進的な法律事務所のケースです。
フィンランドにとてもユニークで先進的な法律事務所があります。社名はFONDIA(フォンディア)。
ヨーロッパでは有名な法律事務所で、働きがいのある企業ランキングのGreat Place To Workで国内3位、法律事務所部門でヨーロッパ1位を獲得しています。
また、2017年3月に法律事務所としては世界で初めてナスダックに上場しました。売上高は約18億円、営業利益約2.5億円で、従業員は113名(うち弁護士80名)です。スタートアップなどの中小企業がメインのお客様です。
FONDIAでは「テクノロジーが法務サービスを変える」という発想で、ITをビジネスにフル活用しています。
まず、ビジネスモデルが非常にユニークです。FONDIAは「LDaaS」という名称で法務サービスを提供しています。「LDaaS」とは、Legal Department as a Service の略で、「サービスとしての法務部門」と訳します。
IT業界には、これと似た言葉でSaaSという言葉があります。SaaSとはSoftware as a Service の略で、「サービスとしてのソフトウェア」と言います。今でいうクラウドですね。
LDaaSは企業内弁護士(インハウス)と企業外弁護士(アウトソーシング)のいいとこ取りのサービスで、スポット案件ではなく、継続的に予防的な法務サービスを提供していくモデルです。
これは、月額で継続課金されるモデル、法務サービスのサブスクリプション(継続課金)モデルです。それによって経営が安定します。実際、レギュラー顧客からの継続的な売上が72%を占めています。
そして、業務効率化および顧客満足向上にITを活用しています。具体的には、顧客とつながるデジタルツール「My Fondia」を自社開発して、顧客に提供しています。
「My Fondia」では、顧客ごとにアカウントが発行されます。
このシステムにログインすると、案件の進捗状況などすべてのやり取りが時系列で見えます。業務の見える化がされており、誰がいつどのような対応をしているのか一目でわかります。
さらに、このシステムにはレコメンデーション機能が付いていて、次にどのようなアクションをすればよいか指示が出てきます。こうして予防的な法務サービスを実現しています。
これらすべてを顧客と共有することができ、ITを通じて顧客とつながることを可能にしています。
それによって、顧客の満足度も上がり、弁護士側も効率的に働くことができるようになります。
効率的に働く仕組みは採用においても重要です。みなさんは手作業が多いアナログな職場で働くか、業務が仕組化・効率化された職場で働くか、どちらがよいですか?北欧においては、ITを活用して効率的に働けるかどうかは採用の重要な判断軸のようです。
最後に、このFONDIAでビックリしたのはオフィスです。法律事務所ですからお堅いイメージかと思いきや、とてもフレンドリーでポップなオフィスなのです。
まずオフィスに入ると、いきなり出てくるのがカフェ!ウェルカムムードで出迎えてくれます。
オフィスもとてもカラフルで、リラックスできる感じです。
至る所に社員の写真が飾られていて、社員を家族のように大事にしている姿勢が表れています。
以下が会議室ですが、16の部屋があり、それぞれユニークな部屋のつくりになっています。
キッズルームもあり、ここで採用の面接が行われます。
面接者との価値観を合わせるためだそうです。
子どもを連れてきて仕事もできます。
ここまでオフィスに投資しているのは、優秀な人材を惹きつける採用と、顧客に気軽に来てもらえる環境を用意するためです。
これからの働き方を考える上でも、オフィスのあり方、役割というのは非常に重要になってくると思われます。
フィンランドのユニークな法律事務所FONDIA、いかがでしたか?
すべて取り入れることは難しいですが、参考にしたい部分がたくさんありました。できる点から取り入れていきたいですね。
株式会社船井総合研究所
IT・セキュリティグループ
グループマネージャー/シニア経営コンサルタント 斉藤芳宜氏
IT企業コンサルティングチームにおいて、即時業績アップにつながるコンサルティングを得意とする、IT ・ソフト開発会社専門コンサルタント。「答えは現場にしかない」という信念のもと、年間250日以上を現場での調査と業績アップ支援に充てている。(出典:船井総合研究所 )