「知っておきたい・解決」シリーズでは、中小企業の皆さまのオフィスのお困りごと、課題解決をテーマにした解説をお届けします。
前回は「データ保管」をテーマにお送りしました。
知っておきたい「データ保管の解決キーワード5選」~中小企業IT担当者向け
「知っておきたい・解決」シリーズは、中小企業IT担当者の方に知っていただきたいIT関連の課題解決のヒントをお伝えします。今回のテーマは「データ保管」。デジタル化が進む中、増大する社内のデータ保管方法について解説します。
今回のテーマは「ペーパーレス」です。
デジタル化のプロセスで、ペーパーレスは頻出のキーワードではないでしょうか。デジタル化を進める浅間商事でも、業務効率化を目的とした結果、多くのペーパーレスが実現しました。
今回はペーパーレスの実例を挙げながら、どのような課題解決に役立つかをご紹介してまいります。
実例1:商談(提案資料、カタログ類)
商談現場でのペーパーレスが進んでいます。
提案資料、カタログの商談資料のデータをクラウド上にアップすれば、社外からパソコン、モバイル端末(タブレット等)で利用できます。
資料の持ち運びが不要になるだけでなく、印刷ミスや資料間違いといったリスクが軽減されたり、外出先で資料の編集ができたりも実現します。
以前は浅間商事でも、お客さまへの提案資料を印刷し、メーカーのカタログと一緒にお客さまにお見せしながらの商談が一般的でした。
そのため、朝の訪問前に複合機が渋滞してしまったり、手持ちにない資料を要望された場合にその場で回答ができなかったりなど、効率がよくありませんでした。
現在も紙を使用していますが、場合によってはPDFのみでご説明したり、必要になった追加の資料や情報をその場でクラウドからパソコンに呼び出したりといった、ペーパーレスが実現しています。
【ツール例】
- クラウドストレージ
- モバイル端末(モバイルPC、タブレット)
【課題解決】
- 資料の持ち運びが楽になる。
- 印刷ミス、資料間違いなどのリスクが減る。
- その場でお客さま用にカスタマイズして提出できる。
実例2:見積書、請求書、領収書
見積書、請求書、領収書など一部の証憑書類の電子化が進んでいます。
このような電子書類は請求書発行システムから発行されているのですが、自社はシステム未導入でも、電子化された証憑書類を受け取る機会は増えているのではと思います。
電子データであれば、紙の出力が不要なだけでなく、押印、郵送の手間とコストが省けます。そして、メールで送信するため、送付と受け取りが迅速に完了します。
受け取った側も、電子データであれば、紙のファイリングや長期の保管場所が不要になります。(法令対応した方法でのデータ保存は必要です。)
取引先の都合で電子化が難しいというお声はまだまだ耳にしますし、浅間商事も未導入ですが、今後この流れは進むと考えられます。
【ツール例】
- 請求書発行システム
【課題解決】
- 印刷、押印、郵送などの手間が省ける。
- 郵送に比べ迅速に送付/受取ができる。
- 情報がデータのため、他の販売・経理関連ツールとの連携が容易になる。
- 保管が楽になり、検索も簡単になる。
実例3:日報
日々の業務内容を記録する日報。業務報告、情報共有、メンバー育成などに活用されている企業も多いと思います。
手書きはもちろん、データで作成しても紙に出力・保存しているケースでは、管理の観点から電子化もおすすめです。
電子データであれば、共有しやすくなり、検索性があがります。また、紙の管理も不要になります。内容によっては機密情報ですので、紙による情報漏えいも防げます。
なお、運転日報、現場での作業日報など、日報が欠かせない業種では、専用アプリなども登場しています。サービス内容やサポート、コストなどを見極めながら、導入を検討されると良いのではと思います。
浅間商事では、営業日報を完全電子化しています。数十人の営業担当の活動内容や活動件数が、他の拠点のメンバーやマネージャー、経営者まで、いつでもどこにいても確認できます。
また、サービスアドバイザーがお客さまにサポート内容のご確認をいただく「作業報告書」のアプリ化を進めています。従来は紙行っていた確認・署名のプロセスを電子化することで、集計・管理しやすくなり、データによる見える化も実現します。
【ツール例】
- ドキュメントツール(OneNote、Notionなど)
- ビジネスチャット(Teams、Slackなど)
- CRM、SFA
- 専用サービス、アプリ
【課題解決】
- 保管が楽になり、検索性も上がる。
- 必要であれば、集計やデータでの管理も簡単に。
- 紙による情報漏えいリスクを軽減。
実例4:会議資料
会議資料の電子化もおすすめです。
紙の場合、会議前に説明資料を人数分印刷し、配布。会議の後は捨ててしまうか、整理しきれずにためてしまうことはないでしょうか。
また、商談資料と同じように、印刷ミスや資料間違いが起こりえますし、処分する際はシュレッダーや溶解しなければ、社内文書が社外に流出するリスクもあります。
このような状況は、会議資料の電子化で改善されます。
登壇者だけでなく、場合によっては参加者もパソコンが必要になりますが、大型ディスプレイを使い電子データで発表、共有することで紙の出力が不要になります。Web会議であれば、そもそも資料の共有は画面上のため、原則ペーパーレスで行われることが多いです。
また、印刷のステップがないため、会議の直前まで編集したり、会議後に更新から共有までも手軽かつ迅速に行えたりします。
浅間商事でも、社内会議を原則Web会議に移行してから、ペーパーレスが加速しました。対面であっても、社内会議で紙を出力することはほとんどなくなりました。
自分のパソコンで自由に資料を拡大できますので、文字が小さくて読めない、画面が遠くて見えないといったトラブルも少なくなりました。
【ツール例】
- 対面会議:モバイルPC、大型ディスプレイ
- Web会議:Web会議ツール(Teams、Zoomなど)、Web会議システム
【課題解決】
- 出力の手間や無駄を削減できる。
- 印刷ミス、資料間違いなどのリスクが減る。
- 紙による情報漏えいリスクも軽減。
実例5:申請(稟議、経費、勤怠)
社内の各種申請、承認のプロセスを電子化するメリットは少なくありません。
紙に出力し、押印、回覧といったプロセスがなくなっただけでなく、処理後の集計、管理なども迅速かつ正確になります。
特にこのようなバックオフィス系管理ツールは正確性、機密性などが重視されるため、データを間違えない、紙での情報漏えいを防ぐ、といったポイントは大切です。
近年、さまざまなクラウドサービスが登場しており、クラウド版のため導入も手軽になりました。
以下は、浅間商事の自社事例です。
稟議:
稟議はビジネスチャット(Teams)で行っています。承認者がコメントを返信することで、誰が、いつ承認したかまで記録できます。
必要に応じてExcelの稟議書も添付していますが、印刷・押印のプロセスはないため、紙ではなくExcelファイルで管理しています。
経費精算:
以前、小口現金はExcelで計算し、出力したものにマネージャーが押印して承認していました。さらに事務スタッフが経理と連携しながら現金を管理し、現金での精算を行っていました。
クラウド経費精算ツール導入後は、システムに領収証を添付して申請、承認。精算は月一回、経理から直接振り込みになり、ペーパーレスおよびハンコレス、現金レスも実現しました。
勤怠管理:
出退勤、休みの記録、申請、承認、管理なども、以前はExcelで作成し、紙の承認(押印)後に提出していました。勤怠の締め日後に、人事チームでの作業が立て込む原因の一つでした。データも個人が作成するExcelのため、データが正確かどうかの確認も困難でした。
クラウド勤怠管理ツール導入後は、出退勤、休みの申請などがオンラインで完結し、ペーパーレスに。残業時間や休暇の残り日数なども自動計算され、自分の勤怠状況の管理が容易になり、人事への問合せも減りました。紙の管理も不要になり、情報漏えいのリスクも低減されたと感じています。
【ツール例】
- 各種クラウドツール(経費精算、勤怠管理など)
- ビジネスチャット(浅間商事はTeamsで稟議を実施)
【課題解決】
- 出力の手間や無駄を削減できる。
- 印刷ミスなどのリスクが減る。
- 紙による情報漏えいリスクも軽減。
- 集計やデータでの管理も簡単に。
- 情報がデータのため、他のツールとの連携が容易になる。
- 保管が楽になり、検索も簡単になる。
まとめ
今回は、ペーパーレスの実例を5つ挙げながら、どのような課題解決に役立つかをご紹介いたしました。
- 実例1:商談(提案資料、カタログ類)
- 実例2:見積書、請求書、領収書
- 実例3:日報
- 実例4:会議資料
- 実例5:申請(稟議、経費、勤怠)
共通しているのが、次の点です。
- 紙の管理が不要になり、紙による情報漏えいリスクも低減。
- 出力、押印などのプロセスが省略され、やり取りが迅速になる。
- データ化されることで情報の正確性があがる、扱いやすくなる。
デジタル化、DXと聞くと、何から始めてよいのか分からない、というお客さまも少なくありません。
ペーパーレスはその第一歩として、取り組みやすい施策です。
ペーパーレスは目的ではなく、手段ですが、本記事でご紹介した実例などを参考にしていただきながら、「この業務の紙を無くしてみよう」と社内でお試しいただけたら嬉しく思います。