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中小企業のIT担当者は、他の業務との兼任であったり、一人で社内すべてのIT業務を担っていたりするケースが多く見られます。
「知っておきたい・基本」シリーズでは、そのような中小企業IT担当者の方に、ぜひ知っていただきたいIT関連の基礎知識をお伝えします。
難しい部分は、当社のようなITサポート会社に頼っていただきつつも、基礎知識は自社のITレベルをより高いものに上げられます。ぜひ皆さまの学びにご活用ください。
今回のテーマは「ネットワークの基本」です。
ネットワークの用途は会社さまによって異なり、課題も多様です。ネットワークの基本を知ることで、自社の課題解決の糸口を見つけていただけましたら幸いです。
なお、YouTubeに解説動画を掲載しております。こちらは概要を10分程度で分かりやすく解説しております。ぜひ併せてご覧ください。
「ネットワーク」とは
「ネットワーク」という言葉から、皆さまは何を連想するでしょうか?
ネットワークとは、サーバーや、パソコンなどの端末をつなぐ通信設備で、回線や機器から構成されています。社内のパソコンをつなげたものもネットワークですし、それを世界中に広げたインターネットも、ネットワークです。
インターネット、社内のパソコン同士の通信、拠点間の通信、外出時スマホでのネットなど……。皆さまの業務を行うにあたり、すでに身近で欠かせないインフラの一つになっていると思います。
基本1:IPアドレス
IPアドレスとは
最初に知っていただきたいキーワードが「IPアドレス」です。
IPアドレスとは、ネットワークにつながる各種機器や端末に割り当てられた番号です。
各種機器とは、パソコン、スマートフォン、Wi-Fiなどの通信機器のほか、ネットにつなげて利用している複合機やネットワークカメラなども該当します。
IPアドレスは、ネット上でのその機器の「住所」にあたる番号で、通信する際に相手を識別するために必須の番号です。
普段、何気なく使っているパソコンやスマートフォンも、インターネットや社内のネットワークに接続している場合は、その端末に「IPアドレス」が割り当てられ、ネットワーク上の他の機器や端末と通信している状態です。
IPアドレスは世界共通で、かつ唯一の番号です。ですので、IPアドレスから「どの国」の「どの都市」かまで特定できます。
IPv4(アイピーブイフォー)
IPアドレスは現在、「IPv4(アイピーブイフォー)」と呼ばれる方式が主流です。
IPv4は「0.0.0.0」から「255.255.255.255」まであります。
各「.(ドット)」で区切った場所に、「0」から「255」までの数字が入るため、約43億※通りのIPアドレスが存在します。(※256の4乗)
「グローバルアドレス」と「プライベートアドレス」
IPアドレスには「グローバルアドレス」と「プライベートアドレス」の2種類があります。場合によって使い分けられています。
グローバルアドレス
通常のIPアドレスは、「グローバルアドレス」と呼ばれます。
プロバイダー(回線業者)と契約すると、通常、グローバルアドレスは決まっておらず(固定されておらず)、定期的に変わったり、接続のたびに空いているアドレスが割り当てられたりします(動的/変動IPアドレスと呼ばれます)。
外部からアクセスしてもらうためのWebサーバーを構築したり、安全な通信ができる線を仮想的につくるVPNを利用したりする場合は、その機器の住所にあたる「固定されたグローバルアドレス」が必要です(別途、固定グローバルIPアドレスを契約することになります)。
プライベートアドレス
グローバルアドレスに対し、会社や家庭のネットワーク内では、多くの場合「プライベートアドレス」というIPアドレスを使いまわします。
ネットワークにつながる機器が全世界で増え続けているため、約43億のIPアドレスは、いつか足りなくなってしまいます。また、IPは「住所」のようなものであり、IPアドレスから場所や端末まで特定できてしまうことは、セキュリティ上好ましくありません。
そこで、ネットワーク内でのみ利用するプライベートアドレスが登場しました。すべての端末が、常にインターネットに接続する必要もないため、必要な時にIPアドレスを割り当てる仕組みです。ネットワーク内でIPアドレスの使いまわしができます。
IPアドレス枯渇問題を背景に登場したプライベートアドレスですが、プロバイダーの許可や設定を必要とせずに会社や家庭内で自由に使えることも、普及の後押しになったと考えられます。
基本2:プライベートアドレス
会社や家庭など、ネットワーク内でのみ利用する「プライベートアドレス」について、もう少し詳しく解説します。
IPアドレスは、「0.0.0.0」から「255.255.255.255」の一部を、プライベートな空間で使えるように規定しています。
使用する環境によって、次の3種類が使い分けられています。
- クラスA:「10.0.0.0」~「10.255.255.255/8」…割り当てられる範囲が多い
- クラスB:「172.16.0.0」~「172.31.255.255/12」…時々見かけます
- クラスC:「192.168.0.0」~「192.168.255.255/24」…一般的によく見るアドレスです。家庭用ルーターの多くがこのアドレスです
インターネットに接続する機器のみに、グローバルアドレスが割り当てられます。たとえば、ルーターにはグローバルアドレスが割り当てられます。
そして、ルーターが、「インターネット(グローバルIPアドレス)」と「イントラネット(プライベートIPアドレス)」を橋渡しします。ルーターはセキュリティ強化にも役立つため、その点でもプライベートアドレスの仕組みはメリットがあります。
なお、プライベートアドレスの場合でも接続台数に制限があります。
たとえば、「192.168.0.0」というアドレスを使うとします。
理論上は一番右の数字は「0」から「255」があり、256台のアドレスを使用できますが、実際には
- 192.168.0.0=アドレスグループそのもの
- 192.168.0.255=ブロードキャストアドレス
……となっており、両端は使用できません。さらに、ルーターがアドレスを一つ使います。
そのため、実際に割り当てられる範囲は「256-2-1=253」で「253台」になります。
複合機などのネットワーク機器はIPアドレスが必要なため、パソコンの接続可能台数はもう少し減ります。
そもそも、ルーターによりネットワークへの同時接続台数に制限があります。IT担当者の方は社内の接続端末数によって、LANの配線、機器の選定や設定内容を検討していただく必要があります。
基本3:DHCPと固定IP
パソコンを新たに購入し、社内のネットなどプライベートなネットワークに接続する際は、パソコンに対してその環境に合わせたIPアドレスの設定が必要になります。
パソコン自体のIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、そしてDNSサーバーのアドレスです。
この4つをすべてのパソコンに一台ずつ設定するのは大変です。
また、IPアドレスは固有の番号のため、そのパソコンに設定したIPアドレスはほかのパソコンでは使えなくなります。そのため、どのIPを誰が使用しているかの管理が必要になります。
社員の入退社や、パソコンの故障に伴うパソコンの入れ替えなどの際、毎回設定し、番号を管理する必要が出てしまいます。
そのため、多くの場合「DHCP」という機能を利用します。
DHCPは、パソコンがネットワークに接続するための基本的な設定を自動で行ってくれます。また、IPは空いている番号を自動割り当てするため、IPアドレスの管理が不要になります。
会社に出社して、何も設定することなく自分のパソコンをインターネットに接続できる理由の一つに、このDHCPがあります。
一方で、IPアドレスを固定するケースもあります。プリンターや複合機などは、IPが固定されていないと接続できなくなってしまいます。
そのため、このような共有の機器には「固定IP」が設定されています。
なお、近年はDHCPを利用(空きIPを自動割り当て)していても、社内のIPアドレス不足が課題になっています。
有線接続が一般的だった時代は、ネットワークに接続するのは主にパソコンのみだったため、IPアドレスが足りなくなることはあまりありませんでした。
しかし、Wi-Fi(無線)が普及し、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末も接続するようになると、接続する端末の台数が2倍になるケースも珍しくありません。
たとえば、社員30名の会社さまの場合、パソコンだけでなく社用スマートフォンを全員が接続した場合、60台分のIPアドレスが必要になります。
社員数や、使っている端末、使い方などにもよりますが、30名くらいの会社さまでも100台ちかく接続可能な設定にするケースも増えています。
※DHCPの導入事例はこちら(浅間商事がWi-Fi導入およびDHCP設定をご支援しました。)
【株式会社デルフォニックス様】 Wi-Fi環境が「シームレスな働き方」の第一歩に
株式会社デルフォニックス様のWi-Fi導入事例です。インターネットの無線化とテレワークの定着により、シームレスな職場環境、働き方を実現されました。
基本4:ネットワーク関連機器
ここまで技術的な話題が中心でしたが、ネットワークにまつわる「機器」をご紹介します。
実際に使用している機器が、どのようにネットワークにかかわるのかを知ることで、「ネットワーク」を身近に感じていただけたらと思います。
ネットワーク機器
ルーター/ハブ/モデム/ONU
ルーターは、異なるネットワークを接続するためのネットワーク機器です。たとえば、社内(LAN)とインターネット(WAN)をつなぐためには、その間にルーターが必要になります。無線対応のものはWi-Fiルーター、無線LANルーターなどと呼ばれます。
ハブは、主に複数のケーブルをつなげて通信できるようにする中継機器を指し、社内で複数の機器をネットワークにつなげる際に使用します。
モデムとは、デジタル信号とアナログ信号(電話回線、ケーブルテレビ回線など)を、変換するための装置です。現在は光回線が増えていますが、光回線はアナログではなく光信号のため、モデムではなくONU(光回線の終端装置)を使用します。ルーター機能を内蔵したモデムやONUもあります。
UTM
UTMはセキュリティ対策機器ですが、ネットワークの出入り口に設置する、ネットワーク機器の一つです。
ルーター(外部と内部をつなぐネットワーク機器)の直下に設置する(ブリッジモード)もできますが、浅間商事では既存のルーターを置き換えて設置する(ルーターモード)をおすすめしております。
ルーターモードであれば、UTMが社内ネットワークのセキュリティを強化しつつ、ルーターとしても機能します。
ネットワークにつながる機器
NAS
NASはネットワークに接続できるハードディスクです。ネットワークを経由してパソコンなどから接続することで、利用できる大容量ストレージです。ファイルサーバーに比べ、管理の手間やコスト面で導入しやすく、特に中小企業で普及しています。
ネットワークにつながることで複数の端末からアクセスできるだけでなく、VPNを利用すれば、社外からも安全に社内のデータを利用できます。
複合機
複合機は、ネットワークにつながるようになり、さらに多機能化したオフィス機器の一つです。
ネットワークに接続することで、プリンターとして使用する際、端末と複合機を直接ケーブルでつなぐ必要はなくなりました。また、スキャンしたPDFをメールに転送したり、受信したFAXをPDFで転送したりなど、ネットワークにつながることで機能の幅が広がりました。
ネットワークカメラ
監視カメラは、カメラと映像を保存するハードディスクを物理的なケーブルでつないでいます。複数カメラがあれば、それぞれケーブルをつなげる必要があります。
ネットワークカメラは、ネットワークに接続することにより、ネットワークを経由して映像を端末に映し、保存できるカメラです。クラウド対応している製品であれば、映像をスマートフォンなどネットワークの外から確認・管理できます。
電子黒板(大型ディスプレイ)
パソコンを内蔵した電子黒板(大型ディスプレイ)は、端末を経由せずディスプレイから直接ネットワークに接続できます。
そのため、ディスプレイからWeb会議に参加したり、画面に書いた内容をデータで共有したり、といった使い方ができます。
今後の広がり(IoT)
IoT(Internet of Things)とは、「モノのインターネット」と呼ばれ、さまざまな機器やモノがネットワークにつながることで、その役割の幅を広げています。
たとえば、監視カメラや入退室管理をネットワークに接続し、管理されている事例が増えています。
空調や照明の制御もIoTの一つです。浅間商事でも、オフィスの照明をスマートフォンで操作するために、Wi-Fiを導入されたお客さまがいらっしゃいました。
今後も、オフィスのあらゆる機器がネットワークに接続し、その利便性を高めていくと思われます。
基本5:IPv6(アイピーブイシックス)
以上の説明は、現在主流の「IPv4」を前提にお話ししました。
IPv4は、IPアドレスが全世界で約43億という制限があります。DHCPなどの技術を使いながらも、インターネットの普及に伴い、IPアドレスの枯渇が心配されている規格です。
そこで登場したのが「IPv6(アイピーブイシックス)」です。(「アイピーバージョンシックス」とも呼ばれます。)
IPv6は約340澗(かん)個(43億の4乗)ものIPアドレスが使用可能で、IPアドレスの枯渇問題の対策となっています。
※参考:IPv6アドレスの表記法とは(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)
このIPv6は、私たちのネットワーク環境にはどのように影響するのでしょうか。
IPv6には、従来の「PPPoE」と、新方式である「IPoE」方式があり、後者の「IPoE方式」を利用すると高速になると言われています。
そして、そもそもIPアドレスの枯渇問題対策でもあるため、日本でもいずれ主流になっていく規格です。
GoogleはIPv6の統計データを公開しています。こちらはGoogleのサービスに対し、IPv6で通信が行われた割合です。当原稿執筆時時点で、日本は約50%となっております。
ただ、高速化については現状IPv6対応したWebサイトが対象で、まだ効果は限定的とも言われています。
また、日本のIPv6は、日本独自の部分もあります。浅間商事のお客さまで、海外のUTMなどが対応していなかったため、ルーター機能が使えなくなってしまうという事例もありました。
IPv6の会社での導入は、事前に、当社のようなネットワークをサポートする会社にご相談いただければと思います。
まとめ
今回は中小企業IT担当者さま向けに、「ネットワークの基本」を、次の5つのキーワードをベースに解説しました。
- IPアドレス
- プライベートアドレス
- DHCPと固定IP
- ネットワーク関連機器
- IPv6(アイピーブイシックス)
各種機器がネットワークに接続するために、住所となる「IPアドレス」が必要になります。
IPアドレスには「グローバルアドレス」と「プライベートアドレス」があります。通常のIPアドレス(世界中で固有のアドレス)がグローバルアドレスと呼ばれるのに対し、プライベートアドレスは、自社のネットワーク内で利用するIPアドレスです。
現在のIPv4方式では、IPアドレスは約43億通りで、いずれ枯渇するため、「プライベートアドレス」が登場しました。
プライベートアドレスは、ネットワーク内で固有のアドレスですが、固定してしまうと端末ごとに設定やIPアドレスの管理が必要になります。
複合機のような共有の機器には、固定IPを使うケースもありますが、多くの端末には「DHCP」が広く使われています。DHCPは、パソコンがネットワークに接続するための基本的な設定を自動で行ってくれます。また、IPは空いている番号を自動割り当てするため、IPアドレスの管理が不要になります。
また、「ネットワーク関連機器」として、ネットワークに接続するための機器や、ネットワークに接続する機器をご紹介しました。
最後に、IPアドレスの枯渇問題を解決するための「IPv6」について補足しました。IPv6はいずれ主流になっていく規格ですが、機器の対応などまだ課題もあり、導入のご検討は外部業者へのご相談がおすすめです。
オフィスの機器がネットワークにつながることで、便利になり、業務効率化につながる事例が増えてきました。そしてネットワークはより身近に、より欠かせないインフラの一つになっていくでしょう。
中小企業のオフィスにも、ネットワークの速度や安定性、そして柔軟性が必要になっていきます。このような時流に対し、浅間商事では、社内ネットワークの改善と無線化(Wi-Fi)導入をおすすめしております。
中小企業さま向けのネットワーク整備は、当社が得意としている分野の一つです。ぜひお気軽にご相談ください。